デザインを考える日記

千葉工業大学大学院特別講義の講義内容を書いていきます。

映像とデザインの未来

今回講義してくださったのはヒューマンセントリックス代表の中村寛治さんです。

中村さんは企業のプレゼンや広告で使われる動画を制作する企業の代表です。

中村さんは動画制作会社では珍しく土日出勤無し、徹夜無しの環境を作り上げています。

どのような企業かなぜそのような環境になったのか事例を基に紹介します。

 

事例

ヒューマンセントリックス

ヒューマン(人)セントリックス(中心)はビジネスで使われる法人向けの動画を制作する企業。リピート率は9割以上であり日本で草分け的な存在

 

動画でプレゼンするメリット

紙より動画のほうが伝わりやすい

人は動いているものをつい目で追ってしまう。紙でただ文章をみるより動画のほうが印象に残りやすい。

 

CMのCM

2012年ごろに限られた時間帯であるがヒューマンセントリックスのCMを制作した。

このようにCMのCMはあまりない。

 

動画制作

リエーターとはお客様の要望に合わせて創作する。

目的があって手段(表現・デザイン)がある。

バイラル動画とはインパクトがあって拡散しやすい

人が持っている本来の輝きを発揮する場

(自身のエンジンを回転させる場)

それにはわくわく感が必要である

 

コンテンツ

コンテンツに付加価値をつける

驚くような素材が安価で手に入り編集を少し変えるだけで豪華な作品になる。

私たちが面白いと思いお客様が価値を感心したものは確実に「みらい」を作っていく

 

まとめ

楽しいわくわくした空間

中村さんは以前は3DCGを取り組んだ動画を提供していましたが制作者が「好きでもつらい」とおっしゃたそうです。クリエーターがおいつめられてはいけない。クリエーターの自由が前提であると考えた中村さんは3DCGの動画制作をやめ安い素材と確かな演出で動画制作をするようになりました。また土日出勤、徹夜営業無しでありながら「お客の満足」「クリエーターの満足」「確かな利益」の3つの成功を収めています。

今回の講義でデザイナーはどのような作品を作るかも大事だが、自分がいい作品を作れる環境であるかも大事であると気づかされました。

 

【第10回大学院特別講義】体験とデザインの未来

今回講義してくださったのはINFOBAHN Incの井登友一さんです。

井登さんはユーザー視点のコミュニケーションデザインを中心としたインフォバーンの取締役を務めています。

今回井登さんは「経験価値」を中心しに講義してくれました。いかに事例を紹介していきます。

 

事例

経験価値

モノから経験へ

ここ10年ぐらいのイケてる企業(GoogleFacebook、PokemonGOなど)に共通しているのはモノではなく経験を提供している。

 

グッド・ドミナント・ロジック(GDL)から

サービスドミナント・ロジック(SDL)への転換

GDLではモノとサービスを切り離すことができたが、SDLではサービスの中にものが含まれ一体化している。

SDLの例として以下のものがある

複写機データの集まり

・いつ壊れるか予測することでサービスを提供する

スマートフォン

・端末に価値はないがアプリをインストールすることで価値がうまれる。

医療の現場

・医療機器をモニタリングし、データをとることで壊れる前にアップデートが可能になる。

 

インサイト

インサイトとはユーザーのニーズ・ウォンツ・動機・ゴールについてのシンプルで新しい解釈のこと。

ユーザーはインタビュー調査などで自身が本当に「ほしい物」やしたいことをうまく表現できない。

適切な調査方法を用いることが大切でありユーザーが理解していないレベルで理解することが理想である。

 

まとめ・感想

「超」ユーザー中心発想

井登さんはユーザーへの価値を大切にしている方だと講義で感じました。

テレビのリモコンのように技術や機能性を求めた結果、複雑な物ができてしまい使っているユーザーが誤作動防止のためガムテープで使わないボタンを見せなくしている事実が印象的でした。

このようなことをさせないためには制作者の都合で考えるのではなくユーザーが本当にほしいものは何か?また誰にどんな価値があるか理想のストーリーを制作しユーザーとデザイナーが両想いになるのが理想であるとおっしゃいました。

ユーザーを中心に考えるのはデザインの基本中の基本ですが調査の仕方によってデザイナーの思い通りになりユーザーが置いてけぼりになってしまうことがあることが分かりました。

ユーザーでも気づいていない「不満」や「理想」を見つけ出すのが調査であることを感じました。

 

【第9回大学院特別講義】

今回講義をしてくださったのは東海大学講師富田誠さんです。

富田さんは武蔵野美術大学を卒業しインフォグラフィックスに興味を持ちシステム、デザイン会社を設立した後現在は東海大学早稲田大学の非常勤講師を勤めています。

以下に事例をまとめます。

 

 

事例

 

インフォグラフィクス

・インフォグラフィクスとは情報やデータを視覚的にまとめたものであり、富田さんは福島第一原発の事故のデータを社会的に専門的なことをたくさんの人によりよく見せるためにインフォグラフィクスの重要性を感じ大学で研究を始める。以下に大学のゼミの共同研究や富田さんの自主制作も含めて紹介する。

 

死に方世界図

世界中の人はどのように死んでいくのかを円グラフにしてまとめた図。死というネガティブなワードを決して重くせず見易い図となっている。

 

自主休講の理由図

大学生がどんな理由で自主休講(サボリ)をするのかを様々な理由をまとめてグラフやイラストにした図。

 

政府の会議報告書の視覚化プロジェクト

政府の会議報告書を視覚化し、発言が近いもの同士をまとめて視覚化したりタブレットを使ったりして書き込んで共有してもらう。

 

ポンチ絵プロジェクト

ポンチ絵とは新聞や雑誌などに乗っている社会や生活などの風刺絵である。

ポンチ絵作者の話しているものを収集して制作の際の基準ができて学びの場になりこの見方を当事者(行政など)と取り組むときに相手にあったプロセスを作れるようになる。

 

 

まとめ・感想

当事者デザイン

今回の講義では当事者デザインが大切であることを学びました。課題の解決にあたる当事者は必ずしもデザインに詳しいわけではありません。当事者デザインはデザイナーと当事者の関係が大事であり当事者がデザインできるようにもっとデザインの奥深いところを決して難しく嫌にならないように制作していくことが必要だと感じました。

またインフォグラフィックスなどネガティブなものをうまく視覚化することで人に印象的に残ってもらい新たな探求心が生まれそれがまた次のデザインになっていくと感じました。

 

 

【第6回大学院特別講義】エスノグラフィとデザインのみらい

今回講義をしてくださったのはPARC(パロアルト研究所)・日本代表/シニアリサーチャーの伊賀聡一郎さんです。

 

概要

伊賀さんはインタラクションデザインやエスノグラフィーのビジネス応用を専門とし、「誰のためのデザイン?」で有名なD,Aノーマンの著書翻訳を行っています。

今回伊賀さんは自身の事例のほかに私たちにワークショップを通してエスノグラフィとはなにか学びました。次の事例とともにワークショップを紹介します。

 

事例

「PARC」

・IT技術の基礎を発明している研究所

イノベーション、ハードウェア・ソフトウェア、イノベーションサービスなど様々な分野のグローバルビジネスを提供している。

 

エスノグラフィ」

・人類学や社会学で使われてきた調査手法

エスノ(民族)+グラフィ(書かれたもの)

・民族や風習などを表際に観察し、そこで何が起こったのか記憶する手法

 

エスノグラフィワークショップ

方法

・二人組を作りAとBに分ける。

・Aの人は数分間表示される写真を絵を書かずに言葉だけを記録し書く。

・Bの人は写真を見ない。Aの人が書いた言葉だけで写真を想像して描く。

わたしはAだったため表示された写真をもとに以下のように示しました。

f:id:anzuboux:20170601110002j:plain

*赤文字はBの人が絵を書いた後に指摘した言葉です。

Bの人は上の言葉から以下のように絵を書きました。

f:id:anzuboux:20170601110343j:plain

お手本の写真は見せられないのですが大体その通りに描いてくれました。

しかし上の指摘のようにBの人が悩みながら書きたまたま想像したことが一致したようにも見えます。とくに虫とも間違える「くも」はほかの言葉でバルコニーにいる→外にいる→天気の雲だと連想しながら書いたことがわかります。

 

このように人と人通しだと感情などである程度通じ、多少の分からないことも臨機応変に想像し通じることはありますが、人と感情のない技術(機械)の場合だと難しいことがわかります。以下の事例があります。

 

・40年以上前に行われたエスノグラフィ(ユーザーテスト)ではコピー機で両面印刷を行う。

・しかし両面印刷の仕方がわからないまま終わってしまった。

・実験者の中には有名な研究者もいたがコピーができなかった。

このような事例から人と機械の間ではインタラクションは大事であり人との場合でもいかに相手に伝えられるかが大事であることがわかりました。

 

まとめ・感想

 伊賀さんは私たちにデザインのみらいについて考えて話し合う機会をもらいました。そこで私たちのグループはデザインは将来環境によってデザインは未来にはなくなるのではないかという意見になりました。

伊賀さんは私たちが言っていることは大体当たると言いました。

それらの現状、何が起こっているかをよく理解し記憶するのがエスノグラフィです。

対象となる人から何がみえているのか理解する。それは簡単そうに見えて以外と難しいことだと思います。実際に人は思い込みによって成立しているデザインも多数あるからです。

それらのデザインをリフレームすることが未来のデザインになるのではないかと考えました。


【第5回大学院特別講義】雑貨とデザインのみらい

今回講義してくださったのは(株)タピエ/代表、玉井 恵里子さんです。

 

概要

玉井さんは株式会社 タピエ代表取締役インテリアデザイナーです。

主に大阪と京都でクリエイターズ雑貨「タピエスタイル」を展開しています。

タピエスタイル」はどのような活動を行っているのか次の事例で紹介します。

 

事例

タピエスタイル」

・「かわいい」を日本文化のひとつとして発信をつづける。

美大の学生やクリエーターなど様々な作家さんの作品を売っている。

 

 

Kawaii et cetera」

タピエスタイルの作品をもっと知ってもらうための期間限定のポップアップショップ。

・東京、名古屋、フランス、ミラノなど世界中で展開している。

・ポップアップショップはタピエスタイルの人々が自分たちで飾り付けをしている。

 

「zakkaな大阪」

・大阪の雑貨屋さんなどをかわいいイラストを使って紹介。

・「お好み焼き」「たこ焼き」「食い倒れ」といった今までの大阪のイメージを変える女性向けのガイドブック。

 

まとめ

玉井さんは「目憶力」が大事だと教えてくれました。「目憶力」とは何か自分の考えも含みながらまとめました。

 

「目憶力」

・頭で覚えるのではなく目で見て映像・形として記憶すること。

 

「目憶力」を鍛えるには

・本・絵画・映画などさまざまなものを見る。

・いつもの道順を変えるなど視点を変え新たな気づきを得る。

・感動をメモする。

・高級なもの、リーズナブルなものなどバランス感覚を鍛える。

・現場に出て実際にみる、手触り空気感、光寸法などを鍛える。

 

「10年ごとに時代は変わる」

・10年ごとに時代は変わる。

・2020年代は人やモノなどライフスタイルの変化の時代になる。

・これらに敏感に反応するには今までのもの、新しいものを見て次にどのようなものが来るか予想する。

 

感想

玉井さんがデザインする「タピエスタイル」は他では見られない可愛らしい作品を提供していると講義の中だけでも感じました。

何故この様に感じたのか、それは玉井さんが「目憶力」にとても優れているからです。「かわいい」を発信するために玉井さんや職員は様々なところから視点をみて私たちユーザーを楽しませるために作品を目利きして提供していると感じました。

私もよく絵を見るのが好きでクリエイターや学生の作品展を見て回っていますがそれだけでなくまた別のアンテナを張ってみると新しい発見があると感じました。

 

 

 

【第4回大学院特別講義】プロダクトとデザインのみらい

今回講義をしてくださったのは西村拓紀デザイン(株)/ 代表西村拓紀さんです。

 

概要

西村さんはパナソニックで活動を得て現在は自身の会社西村拓紀デザインの代表のプロダクトデザイナー・クリエイティブデザイナーです

西村さんは最初に「1を0にする」とおっしゃいました。この言葉をモットーにしたデザインの事例を抜粋して紹介します。

 

事例

「KUMITA」

・0歳児からプログラミングを学ぶことを考えて制作した知育玩具。

・非言語を使ったカードを組み合わせてプログラミングを学ぶ。

・今は分かってなくても「あ、これってプログラミングだったんだ!」と思ってもらうことが大事。

 

「archelis(アルケリス)」

・医療の手術中でも座れるように中腰の状態で座ることができる椅子。

・コードレスなので医療機器がたくさんある手術室でも使えるようになっている。

・医者の足に直接つけることで手術中でも体幹を安定して作業することができる。

 

まとめ

「1を0にする」など今までのデザインでは考えられなかったいくつかの言葉を個人的に興味があったのを抜粋して簡潔にまとめてみました。

 

「1を0にする」

・自分たちが行っていることを「出発点」とする。

・クライアントの要望が「1」出発点が「0」としてとらえる。

・今までのデザインを壊していく。

 

他にないことを創り、他ではできないモノを造り、伝える

・既製品ではなくそこでしか作られないものを作る。それらを上手く伝える。

・自分自身が特別なコンテンツを持つこと。

 

感想

「1を0にする」

私は最初「1を0にする」という言葉を聞いて私には難しい手法なのではないかと考えました。しかしいざ西村さんの話を聞くと意外と単純な進め方で事例の中では偶然0になったものをなりました。

これらの話を聞いて私は「1から0にする」考えは今まで皆が作ってきた道を戻って進んでいくものだと考えました。もちろんただ道を戻っていくのではなく、ゆっくり歩いてみたり、上を向いて歩いてみたりなど自分が様々な視点から見ていくのが大事だと感じました。

今までの講義は未来のデザインは自分ではなく自分の外で起こっていることを軸に置きデザインすることが大事といいましたが今回は自分を中心にみてデザインの軸を作ることで新しいデザインが生まれるという考えでした。真逆の考えですがどちらも素晴らしいデザインを制作していることは事実です。私はデザインをするときこれら2つの軸どちらを使うか使い分けられることが大事だと感じました。

【第3回大学院特別講義】家具とデザインのみらい

今回講義をしてくださったのは(株)イデー/デザインマ ネージャーの深田新さんです。

 

概要

深田さんはオリジナル家具を展開するイデー(IDEE)の取締役・企画開発部長デザインマネージャー・家具デザイナーです。このほかにも良品計画や杉屋でデザインを兼務しています。主に日本の国産材の木を使った家具をデザインしています。また曲木の椅子を日本に広めたとして有名です。他にも様々な木を使った作品をデザインしています。これらの事例を講義をもとにいくつかまとめてみました。

 

事例

「R-project」

・日本各地で問題になっている社会的問題を各地にあった魅力を発掘・再発見し地域とともに新しい人の流れをつくるプロジェクト。

・主に廃校や合宿地をリノベーションし新しい施設に生まれ変わらせる。

 

「ザ・ファーム 丸太スツール」

・農山村漁村活性化プロジェクトとして企画された「ザ・ファーム アグリズムパーク千葉香取」からの依頼

・イデーでは同地域で伐採された杉間伐材を利用して無垢材のスツールを製作した。

・イデーではこれ以外のプロジェクトでも木が多すぎて伐採した間伐材を使ったスツールを企業や施設に販売している。

 

 

まとめ

 深田さんは事例のなかで家具をデザインするとき、素材を選ぶときに大切なことをいくつか教えていただきました。また私たちがものを扱うときに考えておくべきことも教えてくれました。いくつかの言葉を個人的に興味があったのを抜粋して簡潔にまとめてみました。 

 

「もの8分目」

・山が荒れたら海も荒れる

・使い切る

・寿命が来るまで大切に使う

・愛着・修理して使う

 

「生活の探求」

・趣味の冒険

 

「社会的に問題になっていることからデザインを作る」

・間伐の問題

・獣害による被害

・がれき×クリエイティブ

・その土地で採れるものを使ってデザインを作る

・労働集約型から安定収益基盤

 

感想

「社会的に問題になっていることからデザインを作る」

私は修士で社会環境を考慮したデザインを研究しているため今回深田さんのデザインの在り方に関心を持ちました。特に森林が育ちすぎて間伐が追い付かない、シカやイノシシによって森が荒れている、津波によるがれきの問題など日本各地で起こっている社会問題からデザインをするという考えに関心を持ちました。

日本はこれから少子高齢化になり自然環境だけでなく学校や施設などの社会環境の問題もこれから増えていくと私は考えています。今回の講義から日本の今を見ることで何年・何十年も続いてくデザインを作ることが大事だと感じました。